豊かな力を養う
合同課題があるって本当?
美術科では、学生が7つの各コースで専門性を学びながらも、所属ではないコースの知識にふれ、技術を学び、表現をする時間が1年生・2年生と設けられています。1年生では前期に「美術基礎演習」、2年生では前期に「共通演習」、後期に「美術と実践力」。普段とは異なる先生からの指導はもちろん、他コースの学生と机を並べて交流することが、より広い視点から美術を学び、それぞれの専門にいっそういかすことに繋がるからにほかなりません。芸工大美術科では、専門性の追求はもちろん、これら合同授業を通して、ぜひ多様な価値観にふれながら皆さんの個性を磨いていってもらいたいと思っています。
その① 基礎力の向上
美術の基礎ってなんだろう?
美術科では、ある対象を「観察すること」から始まる「みること」「さわること」のふたつが基礎であると考えて、表現の幅を広げるカリキュラムを設けています。
平面系の演習では、①自分たちで選択し組み立てまで行う、さまざまなものが入り混じる巨大なモチーフ群と、②今の自分を見つめ直す自画像のデッサン。
立体系の演習では、①目隠しによる立方体制作から始まって、②鏡を見ないで作る自刻像や、③ペアでのお互いの首像の制作。7コースの教員・学生が一緒になって同じ場を共有し、コミュニケーションもしながら行われるこの演習で大切なことは、自分が在籍するコースとは違う沢山の人とともに、いくつもの「みること」「さわること」を通して、さまざまな価値観や表現方法に触れることにほかなりません。それは、制作にあたっての新しいもののみかた・考えかたにつながっていくはずです。
その② 分野を越えた学び
自分が所属する以外のコースから学びたいクラスを2つ選び、自コースとはまったく違う素材や制作プロセスにふれるのが、2年生前期の「共通演習」です。
たとえば、毛筆を使い、和紙に岩絵具や墨などの顔料で描く日本画と、ニードルで銅版を彫り、インクを流して印刷する銅版画では、同じ平面系の絵画でも表現方法がまったく異なります。しかし、そこにこそ新しい表現のヒントがあるのではないでしょうか? クラスは各コースの学生が混ざり合っているため、同級生から刺激を受け、自分の視野を広げる機会にもなっています。
美術は、とても広く、深いものです。未知のジャンルへの挑戦が、常識を破り、限界を超え、自分を大きくするチャンスとなって、さらに自分の専門性を実感し、追求する機会にもなるでしょう。
その③ 社会に向かう
2年生の後半になると、1年生から培ってきた各コースでの専門的な知識・技術がだんだんと身についてきます。
「美術と実践力」は、その専門性を自ら振り返るとともに、自分たちで展覧会の企画・運営まで行うことで、育んできた「美術の力」を社会に発信する演習です。
コースごとの特色に合わせながら、ひとつひとつの作品の見せ方はもちろん、誰をターゲットに、どのような展覧会を企画するか。それは、専門演習を第一に取り組み、3年生へと進級してさらに高度な技術を学び、表現にチャレンジする前に、一度立ち止まって自分の強みを客観的に見つめる機会になっています。展覧会という場で作品を社会にプレゼンテーションすることが、これから自分がどのような技術を身につける必要があるのか、その土台のひとつになるのです。